卵子への応援
妊娠への序曲
聖書のヨハネによる福音書第一章は、【初めにことばがあった。】という有名な一節から始まっている。言葉は視点を変える力を持っている。
寺子屋では妊娠への序曲は、卵子の応援からと位置付けているが、卵子の立場になった時に思い浮かんだ言葉から述べてみよう。
ある日、不妊を訴えて来院されていた人を治療中、
『今は妊娠前だから、卵子ちゃんの卵生期だね。』と、思わずつぶやいた。
ご存知のように胎児には【胎生期】という言葉があって、妊娠ライフでは胎児が健やかに成育できる環境にと誰もが心を配るはずである。
処が、【卵生期】という言葉が認知されていないために、胎生期のように配慮されているとは思えない。それでいいのだろうか?
私は寺子屋を通して懇意になった きまさんから頂いたメ-ルから、【卵生期】の大切さを痛感するようになった。理由を述べてみよう。
卵胞が卵子へと成熟していく期間を【卵生期】であると認識することによって、卵胞を育てている体への配慮はどうあるべきか? という思いに目を向けることになるだろう。
では、【卵生期】はどのような過し方が大切なのだろう?
卵胞が喜んでくれる具体的な応援とは、どのようなことだろう?
鍼灸医学を創造した先人達は、【胎生期】における胎児への応援の知恵を有していた。その一つが【三陰交】へのお灸を奨励して、胎児が成育するに相応しい環境への配慮に心掛けたのである。同様に【卵生期】における卵子への応援もあるに違いない。
更には、過去のどの時代よりも現代文明社会という不自然な環境に身を置いている現代人には必要になって来たのである。
では、私が従来よりも卵子に注目するようになって、卵子への応援というテーマとなったきまさんから頂いたメールの一部を紹介しましょう。
田中先生、こんにちは。 ・・・・・
ところで、1つ質問したいことがあります。
> 流産し易いか否かは、受精卵の生命力にも因るでしょうが、
> 子宮の状態がより大きな条件となると考えています。
先生のこの書き込みについて、もう少し詳しく教えて頂きたいと思っています。
私の場合、子宮の状態も勿論影響すると思いますが、同時にいい受精卵が出来ないという思いが強いのです。
流産する時は、エコーでみる発育の経過がとても悪いのです。
2度目の時は4週5日でまだ胎嚢がみえず、うまくすればもう心拍もとれる時期の5週5日でやっと胎嚢だけが見えたのですが、卵黄嚢などはまだ何も見えませんでした。
その後も8週まで、胎嚢だけがどんどん成長し、とうとう胎芽も見えませんでした。私の周りの稽留流産の経験者は、みんな同じような経過です。いい受精卵が出来ても、子宮内膜がいい状態でなければ着床しないというのはよく理解できます。
私達の場合、受精卵が出来たのは2度だけの筈です。その2度ともが着床に至ったにもかかわらず、初期の段階で胎嚢が育っても胎児が育たないのは、受精卵の生命力の弱さを感じてしまいます…..
今年8月に30歳になり、記念にと勧められて子宮癌検診を受けてみた時、
「妊娠するのに子宮はとてもいい状態よ~」と、褒めてもらったというのがありました。
そんなこともあって、いい子宮内膜と、それ以上にいい卵子が出来るような体になりたいと願っています。
胃腸が悪かったり、頭痛がひどかったりと体調が悪ければ、やっぱりいい卵子を育てるのは難しいんじゃないか~と思ってしまいます。生理にはほとんど問題を感じていないので、やっぱり気持ちは卵子の方にいってしまうというのもあるでしょうか。
きまさんからのメールには卵子への応援という課題が提示されていた。
鍼灸師として、どのような応援が可能なのだろう?というテーマは明けても暮れても私の脳裏から離れず、その答えを求め続けていたのである。
そのようなある日、体が示す奇妙な反応を知った。
そして、この体の反応こそ卵子への応援となるはずだ。という確信を持った。
そこで日々の臨床において追試を重ねた結果、満足すべき効果を実感したので、メルマガとホームページ上で発表したのである。
その後、追試を頂いた鍼灸師の方々や、体創りに取り組まれている人達からも、その効果を実証された嬉しい報告を頂くようになったのである。
具体的な方法は寺子屋おすすめの体づくりの【生姜灸】の中で紹介しています。
赤ちゃんを迎えようと願っている人達は、是非参照して頂き【卵生期】には卵子への応援を実践して欲しいと願っている。
(※ きまさんは、現在3人の素敵なママである)
では卵子への応援を実感された人達を代表して、ちささんからの伝言板への書き込みを紹介しましょう。
コウノトリが来てくれました / ちささん
先日、病院で無事に心拍が確認されましたのでここに報告します!! 現在6週です!
10月下旬に「寺子屋お産塾」に出会って、
「どうして子供ができないの!?」という切羽詰った思いから、
「赤ちゃんが居心地いい状態になれば、きっといつか来てくれるよね」という穏やかな気持ちに変わり、私自身も心にゆとりを持つことができました。
始めは「やらなくちゃ!」と頑張っていた身体創りですが、次第に生活の中に溶け込んでいって、やれる時にやれればいいかな、とまさに60点を実践していましたが、体はどんどん変化していくことを実感していました。
身体創りを始めて1ヶ月位たったときに、首・肩のコリがずいぶん良くなって、1週間に1度は飲んでいた頭痛の鎮痛剤が必要なくなったのです。鎮痛剤は15年以上も手放したことがなかったので、この変化になんだか勇気が出てきました。
生理の状態も、始めは血の塊がやたらと出て、逆に病気なんじゃ・・・と思ったくらいだったんですが、年末あたりから減ってきて、妊娠する前にはほとんど塊が見られなくなっていました。
でも、最後のとどめ(笑)として、【8リョウ穴】へのお灸が凄い効果的だったんだと思います。
鍼灸院に行ってなかったので、いつも「この辺かな?」という感じだったんですが、いいポイントに当たるとすっごく眠くなるくらい気持ち良かったんです。
それに排卵日(というより排卵する頃)がなんとなく分かったりしましたし。全体を通して、決して無理をしなかったことも気持ちにゆとりを持たせてくれたのかもしれません。
ことぶき先生へのメールにも書いたんですが、今回はなぜか
「赤ちゃんが来てくれる」という確信が本当にあったんですよ。
どうして「できる」確信があったのかは自分でも分からないのですが、生理予定日の前から妊娠検査薬をなぜか用意してしまい、全然早い時期からそれを使用してたんです(笑)
かなり薄かったけど反応が出て、二日後、さらに二日後と検査するたびに色が濃くなっていったときは嬉しかったです。
しばらくは初めての妊娠に戸惑い、不安に押しつぶされそうになったりもしましたが、ようやく落ち着くことができました。
これからも小さな命をしっかりと守れるような、たくましい身体と心になれるよう頑張ろうと思います。(60点で・・・)
寺子屋が発刊しているメール・マガジンでも【8リョウ穴】に関するテーマを取上げました。その一部を紹介しましょう。
メルマガ:【8リョウ穴への追試報告】
医療は結果が伴なう。そして、結果から多くのことを学ぶことが出来る。頂いたメールの「生の声」からも教えられることが多い。
紹介しましょう。
始めまして。
名古屋で鍼灸マッサージの治療院をしているものです。先生のHPは、不妊治療でいらしている患者さんに教えてもらいました。
彼女は助産婦さんで、2年ほど続けた治療が効果なく、私の処へいらっしゃいました。
色々話を聞いて、HPの【八リョウ穴】の事を教えてくれたので、私も見て早速やってみました。
とても反応がいい方で、左のほうが気持ちいいと言われ、家でのやり方も指導しました。
ちょうどその頃、病院を変え、内服のホルモン剤で排卵を促すという体外受精(一般には注射ですが、できるだけ負担のない治療を研究している先生のようです)をすることになったのですが、
先日、
「昨日採卵だったのですが、普通なら2個くらいしか出来ないらしいのに、5個も採卵できて先生が驚いていました。
左からとてもいい卵子が出たそうですが、お灸の効果でしょうか」と報告があり、私もびっくりでした。
☆~☆
メルマガ:【8リョウ穴への追試報告 その後】
不妊症には様々なケ-スがあり原因がある。
研究設備もスタッフも居ない町の一鍼灸師が、自分勝手な私見を述べることには、問題があるかも知れない。しかし、医療には臨床結果が伴なう。
だが私一人の臨床例を誇示したところで、我田引水の謗りは免れない。
そこで、【八リョウ穴】の臨床効果を是非他の鍼灸師の方々にもお願いしたいと思っている。
幸いなことに、名古屋市の鍼灸マッサージの先生から追試報告を頂き、前々回のメルマガ84号にて頂いたメ-ルを紹介した。
その先生から、今日その後の経過報告のメ-ルを頂いた。
是非、一人でも多くの鍼灸師の方々に関心を寄せて頂きたい思いから、今回も先生からの経過報告を紹介しましょう。
メルマガ84号で紹介していただいたものです。
追試という形でお役に立てて嬉しく思っています。
報告させて頂いた患者さんは、あの後妊娠され、今6週目です。
八りょう穴のお灸を続け、全身状態もいいし、いつできてもおかしくないとは思っていましたが、一度目で妊娠されるとは本人も思っていらっしゃらなかったようで、尿検査で妊娠を告げられても実感が湧かず、6週に入って心拍が聞こえてじわじわと嬉しくなってきたといわれました。
妊娠のわかったすぐ後にもぐさカイロが届きました。当てていると暖かくて気持ちいいそうです。後は、このまま順調に楽しいマタニティライフを送り、よいお産をされるのを祈るばかりです。
改めてカルテを見ると、初診の頃は、生理痛や生理前症候群がありそれらが徐々に解消して本当に整った体になったところで出会った【八リョウ穴】でした。お灸すると気持ちいいという体の反応に励まされて、心の方も焦りが消えたのではないかと思っています。
すっかり準備ができたところでの妊娠で、ことぶき先生が
「妊娠を目標にするのではなく、赤ちゃんが健やかに育つような体を目標にしましょう」といわれることの意味がよくわかりました。本当にありがとうございました。
メルマガの感想 / ゆかりんさん
メルマガの「八リョウ穴のお灸効果」で、当たんぽぽ鍼灸院にも良い知らせがあったのでご報告します。
つい先日、機能性不妊症で来院されて1ヶ月位(来院回数4回くらい)で妊娠された報告がありました。
私も施術を担当した主人も大喜びでした。
その方にはお家で御主人に温灸を【八リョウ穴】にして頂くように宿題を出し、その気持ち良さに熱心に取り組んでおられました。
診察毎に圧痛箇所が減ってきて、こちらの感触もとても良かったのですが、まさかこんなに早く嬉しい報告が聞けるとは思わずビックリしています。ご本人もとっても喜んでおられ、今は次回の検診で心拍確認を待たれています。
嬉しい知らせがもう1つ。 来院患者の妊婦さんのお話しです。
35歳で7ヶ月(昨年11月現在)の方でしたが、お腹の張りと下腹部の鈍痛がひどく薬を仕方なく服用されていた方が、投薬を止めたいとの事で来院されていました。
その方には赤ちゃんの頭の下の所(産道)に直径8センチの筋腫があり、担当医からは帝王切開の出産になると告げられていました。
ところが週1回のお灸治療で鈍痛や張り感もとれて調子よくなり、最近では何と赤ちゃんの頭は筋腫の下に来ていて自然分娩で大丈夫と言われたそうです。
今月末には元気なお子さんを分娩されることでしょう。
とにかく「お灸の力はすごい!」鍼灸師と妊婦という立場で実感しています。
「本当に効くのかなぁ」と半信半疑でお灸を据えることよりも、
「あ~、気持ちいいなぁ」と思える事が効果を左右する第1歩だと確信しています。
熱いのを我慢する程のお灸や鍼治療はナンセンスですよね。
つくづくそう思う今日この頃です。
その後【8リョウ穴】の他に卵胞の成育を応援してくれるツボを発見することが出来たので、伝言板の《鍼灸師たちの部屋》に発表した。以下に紹介しよう。
卵生期の応援 / ことぶき
「たいせいき」とキーボードを打つと、胎生期という言葉がある。
「らんせいき」と打つと、卵生期という文字は出て来ない。
やっぱり その言葉はないのかなぁ~・・・
不妊?を訴えて来院されている人に、今一番関心を持ってもらいたいのは、
言葉すら存在しない卵生期の応援である。
その応援方法には様々あるだろうが、一つに深谷灸法で紹介されている同身寸による
婦人科疾患の共通穴の中の6ヶ処のツボの中から、E点とF点に関心を寄せている。
その理由。
寺子屋では卵子の応援として、8リョウ穴へのお灸を薦めている。
次リョウ穴に近いE点・F点が8リョウ穴より反応が大きく感知するケースが時としてある。
私は入江式FTに加えて圧診にて選穴しているが、次のように治療する。
まず、両側に灸頭鍼を行なう。
その後、半米粒のお灸をすえるのであるが、今までの臨床では、
卵胞が育っている期間は、育っている卵巣側が心地良いお灸刺激として体は受け入れてくれる。
つまり、左の卵巣にて卵胞が育っているケースではE点。
右の卵巣で卵胞が育っているケースではF点であった。20人中一人の例外もなかった。
(但し、現代医学による内診によって確認した訳ではない。)
では、どうして卵胞が育っていることの応援になると確認するのか? ということになるが、卵胞が成育し成熟して卵巣から生まれた後では、その心地良いという反応が明確でなくなるからである。
以上の体の反応から、卵胞から成熟した卵子へと成育する過程において適切な応援となるのではないか? と推測している。
また、頚管粘液の状態も3日間程度はあり、粘着性の強い白っぽい状態から透明な粘液が充分に分泌される良好な状態となるようである。